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根を張り、帆を張る。暮らしにコーヒーカルチャーを届けていくBERTH COFFEE ROASTERY Haru

東京スカイツリーが映えるタワービュー通りを進んでいくと、芳ばしい香りがふわり。それはきっと、新鮮なコーヒー豆が焙煎されている合図です。

今回訪れたのは、2021年に墨田区横川にオープンしたBERTH COFFEE ROASTERY Haru。旅人が行き交うホステルの1階で愛されるコーヒーブランドから生まれたロースタリーです。

お話を伺ったのは、マネージャー兼焙煎士の西村結衣さん。

独自のコミュニティで築かれた上質なコーヒーの輪は、今後さらに広がっていく予感がしました。

旅人が行き交うホステルのカフェから誕生したロースタリー

大きく開かれた入り口に、明るい店内。BERTH COFFEE ROASTERY Haru(以下:Haru)は、ほっと一息つきに立ち寄りたくなるお店です。中に入ると、さっそく奥には大きな焙煎機が。

朝の焙煎を終えたばかりの西村さんが、ロースタリーとしてHaruがオープンするまでの経緯をお話ししてくれました。


Haruの店内。ひと休みにぴったりの飲食スペースもあります。

「私たちの会社Backpackers’ Japanは、国内外の旅人が宿泊するホステルの運営をメインにしてきました。その中でBERTH COFFEEは、馬喰町にあるホステル『CITAN(シタン)』のエントランスに併設されたカフェです。店名の”BERTH”は、停泊所や発着場を表す言葉。生産者やロースター、バリスタなど、コーヒーに関わるすべての人の想いを重ね、行き交う人々へ一杯のコーヒーを届けたいという思いからこの名前がつきました。宿泊者だけでなく街を行き交う多くの人にも愛されるお店です」

ところが、コロナウイルスの影響によって、ホステルやカフェは休業を余儀なくされる日々が続きました。営業を開始できてもコロナ前に比べて売上が激減。そんなピンチを乗り越える糸口を探そうと、みんなで新規事業のアイデアを出し合ったそうです。


Haruのマネージャー兼焙煎士・西村結衣さん

「アルバイトのメンバーも社員もみんなで話し合う中で、私が提案したのがロースタリーだったんです。それまでBERTH COFFEEは提携するコーヒー屋さんから豆を仕入れていたのですが、自家焙煎にすることでよりコーヒーの味を追究できるし、自分たちでブランドを作ることで未来も広がるんじゃないかと。私は学生の頃から趣味でコーヒーの焙煎をしていたので、何か会社の力になりたいと思ったんです」

そんな西村さんの意見に賛成の声が集まり、晴れてオープンしたのがHaruでした。

「Haruには2つの意味があります。一つ目は、ロースタリーとしてコーヒー豆の専門性を深めることで地中に“根を張る”こと。2つ目は、コーヒーをより多くの人たちに楽しんでもらえるように、みんなで船に乗りこんで“帆を張る”こと。日本のコーヒーカルチャーって、実は中国や台湾、韓国など他のアジア圏に比べてもまだまだ伸び代があるんです。だから、深めることと広げることを合わせてやっていきたいなって」

そんな素敵な想いが込められたHaruの店頭では、農園選びからこだわった多種多様なシングルオリジンのコーヒーをはじめ、コーヒー豆を牛乳で抽出した「ミルクブリュー」など、上質な味わいを気軽に楽しむことができます。


はちみつのような甘みのあるコスタリカのシングルオリジン(600円)とあんこカヌレ(350円)


こちらも人気のドリンク。ミルクブリュー(550円)

農園の人やお客さん、みんなでシェアする美味しいコーヒーの輪

Haruで焙煎されているコーヒー豆は、正真正銘の「顔の見える生産者」から仕入れたもの。ホステルに宿泊したコロンビア人の方の家族が営む農園など、コミュニティから自然と生まれた出逢いを大切にしているそうです。



「コロンビアから農園の息子さんがコーヒーを持って遊びに来てくれて、みんなで試飲会をしたり、今度は私がエルサルバドルやグアテマラに行ったり。これは私たちならではの強みかもしれません。そんなつながりがある小さな農園さんたちから毎年買うことで、信頼関係を築いています。

農園の人たちにとっては、毎年買ってもらうことが豆のクオリティを上げていくための担保になるんです。買ってもらえるかわからない不安の中で、大変な思いをしながらコーヒー豆を育てるのって苦しいですよね。だから『毎年買うよ』と約束をすることで、お互いに『いいものを作ろう』と思えることが大事だと思っています。関税などの都合があってまだ難しいのですが、近いうちに直輸入ができるよう体制をととのえているところです」


お店の棚に並ぶコーヒー豆。パッケージもおしゃれ

このように、Haruのコーヒー豆は小さな農園から小ロットで仕入れているため、さまざまな産地・種類のコーヒーを楽しむことができるのも特徴です。

また、焙煎したてのフレッシュな状態と、数週間経過してガスが抜けた状態では、同じ豆でもコーヒーの味が全く違うとか。そんな日々の変化を楽しみに、毎日Haruへ通ってくる常連さんも少なくないそうです。

「うちに通ってくれたことがきっかけでコーヒーにハマって、今では焙煎までするようになったお客さんもいます。Haruでは『シェアロースト』という時間制で焙煎機をレンタルできるサービスも行っているので、ご自宅用に自分で焙煎することもできるんです」

このサービスは、学生時代に趣味でコーヒーの焙煎を行っていた西村さんの原体験も関係しているそうです。

「焙煎機を買うとなると安くても100万円はするので、買うのも置く場所を探すのも難しくて。時間貸しをしてくれるお店もあるのですが、学生にとってはなかなか高い金額で、どうしても手が届きにくかったんです。だからウチでは、手頃な金額で学生さんでもコーヒーの焙煎にもっと関心をもってもらえるような価格設定にしていて」


香りを嗅いで、コーヒー豆の焙煎具合をチェック

「焙煎機の説明がパンフレットに書いてあるお店ってそんなにないのですが、私たちは持っている知識をさらけ出すことで、もっともっと日本のコーヒーのカルチャーを成熟させていきたくて。もったいぶらずみんなでシェアしたいなと思っています」

まさに“根を張る”、“帆を張る”といったお店のコンセプトを体現する取り組みです。

地域とつながりながらお店を営む心地よさ

お話を伺っている間も、開店前の入り口を覗き込む人の姿がちらほら。会釈して丁寧に対応する西村さんの姿から、地域に愛されている普段の様子が浮かびます。


暖かい日は外を眺めながら過ごすのも◎

ご自身も近所に住んでいるという西村さんに、イーストトーキョーの良さを聞いてみました。

「あったかくて人との距離が近いので、自分たちがやりたいことや届けたいビジョンが伝わりやすいし、お店をやるのにもぴったりな環境だと思います。下町ならではのコミュニティがあるので、口コミで広がっていくのも嬉しいです。

最近、近くの小学校の校長先生が『保護者の方に美味しいコーヒー屋さんがあると教えてもらったので』といらっしゃって。常連さんが、お子さんの学校の校長先生に伝えてくれたんだそうです。そういうつながりが墨田区ならではの心地よさですよね」


オープンして2年。すでに地域に馴染んでいるHaruのこれからについて、最後にお話しいただきました。

「いつか、私たちの会社からコーヒー農園に機材を投資したり、現地に学校を作る手伝いをするのが目標です。そのために、まずはコーヒーの魅力をもっとたくさん発信して、お客さんに届ける量を増やしていくことですね!これからはイベントなども積極的に企画して、日本のコーヒーカルチャーをより広げていけたらいいなと思っています」

どこまでもみんなでハッピーになることを大事にしている西村さんたちのHaru。まずは美味しいコーヒーを楽しむことで、私たちも循環の一部になれるのかもしれません。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞)

BERTH COFFEE ROASTERY Haru
住所東京都墨田区横川2-7-2  Google mapで見る
Instagram https://instagram.com/berth_haru?igshid=YmMyMTA2M2Y=
Facebook https://www.facebook.com/berthcoffeeroasteryharu/
WEBhttps://backpackersjapan.co.jp/berthcoffee/haru

※本記事に掲載している情報は、2023年3月時点のものです。

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