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革の持つ“表情”を見て、個性がデザインになっていく。長く愛せるブランド トウキョウレザーファクトリー

東京都墨田区周辺は、豚革の産地として長い歴史があります。その規模は、全国のシェアにおいてそのほとんどを占めているほど。

今回はそんな地域から生まれた「トウキョウレザーファクトリー」の製品づくりについてお伝えします。豚革を知り尽くしたメーカーから誕生したブランドの背景には、決して同じものはない、革の“表情”一つひとつを拾い上げていく愛情がありました。

現在は独立してブランドを切り盛りする加藤雅信さんの工房を訪れます。

職人の技術継承で目の当たりにした、革作りのリアル

長く愛せるアイテムの代名詞ともいえる革製品。すでにいくつかお持ちの方も多いとは思いますが、その表面をじっくり見てモノ選びをしたことはありますか?

「元々トウキョウレザーファクトリーは、有限会社ティグレという父が経営している革素材メーカーの一事業として生まれたブランドでした」

そう語るのは、ブランド名を引き継いでモノづくりをしている加藤雅信さん。大学卒業後は一般企業に就職をする予定でしたが、職人さんの高齢化により技術継承を頼まれ、革の業界へ入ることになったそうです。


革と長年向き合い続けてきた加藤さん

「最初は、とにかく技術を引き継ぐために革づくりを覚えました。そこで5年ほど経った頃、会社でブランドを立ち上げて、革素材だけではなく革製品も販売していこうということで、右も左も分からない中で作ったのが、今の前身となるブランドでした。でも、革素材メーカーがやっているという特色がなかなかお客様には伝わらなくて。だから、革の素材一つひとつと向き合っているファクトリーブランドなんだともっと知ってもらうために、名前を『トウキョウレザーファクトリー』に変えてリブランディングしたんです。それが2018年でした」

職人さんの下で革の加工技術を学んだ加藤さんは、それまで抱いていた革に対する印象がガラリと変わったと言います。

「実際に現場に入ったら、想像していたよりもリアルだったんです。加工をする前の革って当たり前のように傷がついていて、当時の自分がイメージしていた、完成された革とはギャップがありました。世の中に流通している革製品は、素材にペンキのような塗装をし、型で柄をつけて綺麗に整えられたものがほとんど。均一になるのは良いのかもしれないけど、そこまでして素材の表情を隠さなきゃいけないんだろうかと、ずっと腑に落ちなかったんです」


豚一頭分の革を見せてもらいました

そんな加藤さんの想いがあり、トウキョウレザーファクトリーはブランドがスタートした当初から、革そのものの魅力を追求することを何より大切にしています。

「やはり私は素材を作っていた側なので、革自体をよく見て、どこに特徴があって、どれを生かすべきなのかをしっかり読み込んで製品化していきたいんです」


工房の壁には試行錯誤したさまざまな革の端切れが。常に素材と向き合っていることが分かります

そんなトウキョウレザーファクトリーの製品が生まれる工房を、特別にご案内いただきました。

効率化よりも、革の“表情”を自然に仕上げることを大切に

工房は、千葉県にある小さな平屋の一戸建てです。そこで加藤さん一人が革の裁断を行い、縫製の工程へと送り出します。


金型を使って裁断していきます

「豚革の特徴は、牛革よりも薄くて軽いこと。顕微鏡で見ると表面に3つの毛穴があって、パンチングみたいに細かく穴が開いているんです。だから吸湿性と放湿性が良く、蒸れにくいといったメリットがあります。その特徴から、革靴の内側に使われることが多かったりもするんです」

素材となる革選びと裁断は、製品の“顔”を決める大事な工程です。これまで革作りに携わってきた加藤さん自身が、革の“表情(模様や自然な傷)”をきちんと見極めていきます。

ここでいう“顔”とは製品の見た目を印象付けるもののことで、“表情”とは、革自体の持つ個々の傷や毛穴などの模様のこと。言葉選びからも、加藤さんの革への愛情とリスペクトを感じます。

「やはり素材を見て生かすかというのがブランドの全てなんです。デザイナーさんによっては自分の好きなテイストを全面に出したブランディングをすることもありますが、私にはそういうものがなくて。なんだろう…例えばお肉屋さんが作るメンチカツって、素材を熟知しているからこそすごく美味しかったりしますよね。それと同じことを目指しています」


トウキョウレザーファクトリーの人気商品、ランタンバッグの素材

また、一般的な裁断の工程では、効率化のために同じパーツを一度にたくさん切り出して、パーツごとにまとめて次の工程に出されます。しかし、これでは製品化した際にパーツごとに違った個体の革になってしまうため、革の“表情”が統一できず違和感が出てしまうことも。
そこで、トウキョウレザーファクトリーでは一つ分の製品のパーツを全て同じ一頭の豚革のから裁断し、バラバラにならないようまとめて袋に入れて縫製に出しています。

一頭分の同じ革から、一つの製品を作ります

「手間はかかるのですが、仕上がりは全然違います。それに、背中やお腹の部分によっても革の表情って変わるので、どう上手く落とし込んで商品にしていくかを考えるようにしています」
個々の革が持っている個性を「自然の模様」のように捉え、作為的ではないありのままの個性を生かすからこそ、同じ製品でも唯一無二のモノができあがっていくのです。

TOKYO LEATHER FACTORY

墨田区産豚革のランタンバッグ/キャメル

13,200円

ランタンをモチーフにした、巾着バッグです。
巾着の紐は長さアレンジができて、 手提げとショルダーバッグの2wayで持つことができます。

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使い込むうちにできた傷も思い出の一つに。長く愛せる相棒を迎え入れる

あえて革を均一化せず、ありのままを個性として素敵に仕上げるというトウキョウレザーファクトリーの製品作りは、お化粧で例えるとナチュラルメイクのよう。加藤さんの手にかかれば、革に少し傷があったとしても、その革の愛すべき特徴として捉えられるようになるから不思議です。

加藤さんの工房。背景には多種多様な豚革が重なっています

「革製品は使っていくことで表情が変化するので、新品の状態のまま綺麗に保とうと神経質にならずに、どんどん使い込んでもらいたいです。そうして使い手さんの風合いを作っていくと、より唯一無二のモノになっていくと思うので。使っていくうちにできてしまった傷も個性の一つになるし、『あのときやっちゃったな』っていうのも思い出の一つですしね(笑)。でもそういった傷も、使っていくうちにだんだん馴染んでいきますから」

トウキョウレザーファクトリーの製品をお迎えすることで、日々の暮らしの中に愛着のあるものが増え、長く一緒に過ごす相棒になってくれそうです。

製品のラインナップはいくつかあるので、どうぞお気に入りを見つけてみてくださいね。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように

TOKYO LEATHER FACTORY

墨田区産豚革のコインケース/ナチュラル

3,850円

スナップボタンで開閉するだけの、シンプルな取り出し口で、素早く中身を取り出せます。
袋縫いで作られていて、丸っこく可愛いフォルムが特徴です。 小さいながら、コインが20~30枚余裕で入る容量の大きさ。23gほどの重さで、持っていても負担になりません。

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(取材・執筆:山越栞)

トウキョウレザーファクトリー
営業時間10:00 〜 17:00(問い合わせ対応時間)
定休日土、日、祝日、年末年始(12/29-1/4)
TEL03-6821-1960
WEBhttps://www.tokyoleatherfactory.shop/
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etc. Get!East Tokyo 

※本記事に掲載している情報は、2022年10月時点のものです。

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