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2年越しのリアル開催。コロナ禍も歩みを止めなかったすみだストリートジャズフェスティバル実行委員会の想い

「すみだストリートジャズフェスティバル」という音楽祭をご存じでしょうか?

音楽都市すみだの街を舞台に、あちこちに作られた特設ステージでさまざまなアーティストの演奏を楽しめるこのイベント。「すみだジャズ」の愛称で親しまれ、民間団体によって2010年から毎年開催されてきました。

しかしこの2年間は、他の音楽イベント同様、さまざまな制限を余儀なくされてきました。そんな中でもオンライン開催を決行するなど、不屈の精神で人々へと音楽を届けてくれています。

そんなすみだジャズが、晴れてリアルイベントとして2022年の10月に復活!しかも今年は「すみだワンコインオクトーバーフェスト」という新しいイベントも同時開催されるそうです。

そこで、今年のリアル開催に至るまでの想いを、実行委員長の青木禎斉さん、実行委員の多賀健太郎さんに伺いました。

気づけばスタッフに?人と人との繋がりで続いてきた実行委員

2010年からスタートしたすみジャズは、決して短くないその歴史の中で、徐々に進化を遂げてきました。現在は実行委員として運営に携わっている青木さん、健太郎さんも、ひょんなきっかけから現在の役職があるのだそう。

青木さん:私は第一回目開催の2010年のときにボランティアで参加させていただき、2年目から実行委員のメンバーに入って運営に携わってきました。もともとは仕事のご提案をしようと、営業目的で初代実行委員長にお会いしたんです。その時は実際のビジネスには繋がらなかったのですが、「実はボランティアも募集している」というお声がけに、つい「ぜひ」と返事をしてしまって…(笑)。それからのご縁を大事にして、今に至っています。


初代実行委員長の能厚準さん(左)と現実行委員長の青木禎斉さん(右)

健太郎さん:本当に「つい」ですよね。僕は最初は出演者としてすみだジャズに参加したんです。墨田区で暮らし始めたときにたまたま、すみだジャズのステージを観て感動し、当時バンド活動をしていたメンバーに「来年は出よう!」と連絡して、翌年の審査に通って出演することができました。そのとき、控室に実行委員長の能さん直筆のお手紙が置いてあって「スタッフたちと打ち上げをするのでよかったら来てください」と。そのあたたかさに惹かれて、さらに打ち上げで「墨田に住んでいるなら一緒に実行委員をやろうよ!」というお誘いに、気づけばOKしていたんです(笑)。それからは出演者から実行委員へと割合が徐々に移行していって、今ではすみだジャズがご縁で起業したイベント企画・制作の会社をしながら、実行委員としても活動させてもらっています。



「つい」実行委員会の仲間に入ってしまう理由は、お二人のお話を伺っていてなんとなく分かったような気がしました。すみだの街の各所を使って展開される大きなイベントの運営は大変なはずなのに、お二人ともポジティブで楽しげにすみだジャズのことをお話しされているのです。

運営陣の心意気は、イベント自体の空気感にも自ずと表れるもの。現在は青木さん、多賀さんが醸し出しているすみだジャズへの愛情が、当時お二人を引き入れた実行委員メンバーからも感じられたのではないかと想像しました。


華やかなステージで演奏する出演者の様子(写真提供:すみだストリートジャズフェスティバル実行委員会/撮影:進藤哲宏)

そんなすみだジャズですが、2020年に世界的に流行したコロナウイルスの影響によって、リアル開催の中止を決意せざるをえませんでした。

青木さん:我々は街中でやらせていただいているイベントなので、どうしても近隣の住民の方のご理解がないと長続きさせることはできません。リアル開催することを優先して、近隣の方を不安な気持ちにさせてしまうことだけは避けたかったので、苦渋の選択で、去年一昨年の2年間はオンライン開催という選択をしたんです。

「音楽イベント」ではなく「街おこしのイベント」と謳ってきたすみだジャズにとって、街の人々への配慮は必要不可欠だったのです。しかし、ここでもポジティブに捉えているところがすみジャズの強さです。

青木さん:オンラインでもみなさんに楽しんでいただけるコンテンツを、我々自身が考える良いきっかけになったと思っています。それに、オンラインであることによって沖縄や京都の方にもすみだジャズを観ていただいて。リアルイベントのみだった頃は実際に来ないと分からないイベントだったのが、オンラインだったからこそ遠方の方に認識していただいて、応援のメッセージをいただけたことがものすごく嬉しかったです。


すみだストリートジャズフェスティバル実行委員会の現在のミーティング風景。各々が熱意を持ってすみだジャズに取り組んでいることが感じられます

とはいえ、前代未聞の出来事のなかで多くのイベントが中止を決断した中、すみだジャズはなぜオンライン開催を行ったのでしょう?

青木さん:コロナに負けたくない、という想いが一番ですかね。中止するのは自分たちも納得がいかなかったし、毎年楽しみにしてくださっていた方々に対しても背を向けるような形になっちゃうんじゃないかという、ある種の使命感があって。どうすれば楽しんでもらえるかと模索しながら、過去2年間のアウトプットになりました。

そんな期間を経てきた2022年のリアル開催は、街の人々にとっても勇気を与えてくれそうです。

2022年だからこそできる企画を考えた末の「オクトーバーフェスト」

例年は8月に開催されていたすみだジャズですが、感染症対策のためマスクの着用が必須となる今年は、熱中症などの危険性を避けるために、メイン開催を10月15-16日に以降しました。

その前に、まずは8月14日にすみだジャズ「ZERO」としてステージ数を限定し開催もしています。リアルイベントの運営には2年間のブランクがあった実行委員会も、いい意味で肩慣らしの一日になり、お客さんにもリアル開催の再来を喜んでもらえたそうです。

また、本会期となる2日間は、すみだジャズ史上初となる秋開催。そこで考えた企画とは……?

健太郎さん:すみジャズは墨田区の夏の風物詩のようなものだったので、10月に開催することを実行委員の僕ら自身も最初はイメージが湧かなくて。そこで、10月らしいものを考えた中で思いついたのがオクトーバーフェストでした。それに、元々すみだジャズは複数のビール会社さんが協賛してくださっている珍しいイベントなんです。なので今回は10月開催だからこそ、オクトーバーフェストとして分かりやすく楽しんでいただきたいと思っています。


過去のすみだジャズでも、ワンコインで楽しめるビールの出店は大人気(写真提供:すみだストリートジャズフェスティバル実行委員会)

健太郎さん:すみだジャズ自体は、美味しいビールが飲めて素敵な音楽が聴けるというイメージで定着してきています。だからこそ、今までずっとやってきたことは変わらずに、そこにもう少し楽しい要素として「オクトーバーフェスト」ができるイメージです。また、ワンコインというのも狙いはあって。オクトーバーフェストって大きいジョッキで1000円くらいするものを注文するイメージが強いかと思うのですが、今回はワンコインで全国各地のクラフトビールやフードをちょっとずつ楽しめるというのを打ち出していこうと思っています。「ジャズってなんとなく敷居が高いよね」っていうのをすみだジャズが払拭しようとしたのと一緒で、「クラフトビールって人気だけど高いよね」っていうイメージを取り払っていけたらいいなと。だからすみジャズなりの解釈ということで、頭に「すみだ」とつけた「すみだワンコインオクトーバーフェスト」なんです。

すみだジャズを通して感じてほしい「負けない気持ち」

最後に、2022年のすみジャズをどんな風に楽しんでほしいかを伺うと、実行委員長の青木さんから想像しなかったコメントをいただきました。

青木さん:一番は「負けない気持ち」を感じ取ってほしいです。この2年間のすみだジャズも含めて、常に前向きに進んでいく姿勢をどこかで感じていただけたらありがたいなと思っていて。すみだジャズに毎年協賛をいただいていてきた中には、飲食店もたくさんあります。我々だけではなく、もちろん皆さんがコロナ禍によって打撃を受けているんです。ただ、そこでマイナス要素にばかり目を向けると、どんどん荒んでいってしまう。だから今年のリアル開催を通して、少しでも皆さんに元気を分け与えられるようにしたいです。


スタッフさんたちの元気をもらえそうな笑顔(写真提供:すみだストリートジャズフェスティバル実行委員会/撮影:橋爪徹)

基本思想が「三方良し」のすみだジャズは、来場者、出演者、裏方のスタッフ全員のハッピーをブレることなく追求しています。

今年は街なかの27箇所にステージが出来上がるそう。ぜひ10月は、2年間のオンライン開催を経てパワーアップしたすみだジャズに足を運んでみてください。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞)

すみだストリートジャズフェスティバル
開催期間 2022年10月15日(土)、16日(日)
WEBhttps://sumida-jazz.jp/sj/

※本記事に掲載している情報は、2022年9月時点のものです。

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