錦糸町発!ハロー!イースト東京 この街のだいすきなところ、またひとつ
買う
  • 墨田区立花

「おいしい」の前にいつも「たのしい」を。地域のラムネ屋さんから始まった丸源飲料の新たな直営店

墨田区のどこかで「トーキョーサイダー」を見かけたことがある人は多いのではないでしょうか?

そうでなかったとしても、きっとどんな人も丸源飲料の商品を口にしたことはあるはずです。

外食産業や小売店に向けたBtoBがメインなので一般消費者にはなかなか知られていないけれど、丸源飲料の商品はいくつもの大手チェーン店で使われています。

そんな丸源飲料の商品を、地元の人たちが気軽に手に取れる場所がオープンしました!

「もっとたのしく、もっとおいしく。」を合言葉に、日常の中にあるちょっとしたハレの日を支えてきた100年以上の歴史。

美味しそうなドリンクや食材に囲まれながら、代表の阿部貴明さんに想いを伺いました

「職住一体」でジュースを作っていた時代の交流をこの場所で

訪れたのは、亀戸線小村井駅からすぐの場所に、6月17日にグランドオープンしたばかりの「Food & Beverage mona(モナ)」。

道路を挟んで向かい側には、創業時と変わらぬ場所に本社ビルもある、ゆかりの深い地域です。

お店に並ぶのは、丸源飲料が強みとするジュース・ドリンク類や、冷凍フルーツ、ピューレなど、飲食店に卸している本格的な商品ばかり。

ショールームの役割もあるため、主力商品の多くがここに揃っているそうです。


スーパーなどでは直接買うことのできない丸源飲料の商品が並びます

試飲でいただいたスイカ100%のジュースは、フレッシュで甘いスイカそのものの味に驚きました。


世界各地のパートナーから果汁原料を直接調達して作られるジュース

他にも、フードロスに配慮し賞味期限が近くなった商品を破格で販売している「SDGsコーナー」も。

そもそも丸源飲料は、年に数回「ガレージセール」と称して、地元の方に向けた格安での商品販売を約30年前から開催してきました。これが大人気で、近隣のイベントごとのひとつとなっているそうです。

BtoBで全国にシェアのある丸源飲料が、こんな風に地元で一般の人たちと接点を持とうとしている背景には、昔ながらの「職住一体」で仕事をしていた時代の良さを引き継いでいこうとする代表の想いがありました。


代表取締役社長で4代目の阿部貴明さん

「製造現場がここにある時代は、瓶をたくさん扱っていたので一日中ガラガラと音がしていたし、トラックも出入りしていたので、何をやってる会社なのかが近所にも知られていました。ウチに限らず、昔はお互いにどんな仕事をしているのか分かっていたんです。ところが、規模の拡大に伴って製造現場が別の場所になり、周りにマンションが建ったりもしている今は、周りにお住まいの方からすると『あそこのビルは何をやっているんだろう?』と思うはずです。だから、『ここでこういう仕事をさせてもらってます』ということをお知らせする機会があればいいよね、と始めたのが、ガレージセールをはじめたきっかけでした。

それから、普段はBtoBなので、ウチの社員たちはお客さんにお財布からお金を出して買ってもらうという経験をそれまで一切していなかったんです。だから、伝票だけでしか見ていない価値じゃなく、お金をいただくことの物理的なありがたさを感じてもらいたいという気持ちもあります。」

庶民の「ハレの日」にある、食の思い出と一緒に

2016年に創業100周年を迎えた丸源飲料は、この街にとって特別な日に飲む「ラムネ屋さん」としてはじまりました。

以来、ブレることなく、人々にとっての「特別な時間=ハレの日」を彩る商品づくりを続けています。

1916年、日本ではまだ珍しかったラムネの製造販売を始めた丸源飲料は、今でいうところのベンチャー企業。東京の人々に新しい価値を届ける存在でした。

関東大震災で被災するも、再建した1920年ごろの社屋

当時、ラムネはお祭りや縁日で暑さをしのいだり、映画館に行ったときに買えるような「日常の中にあるちょっと特別な時に飲める」ものでした。

このときから、丸源飲料は「たのしい」と「おいしい」をテーマに商品を生み出していきます。

「時代によって人の感じる楽しさや楽しみ方は変わるけど、『たのしい、うれしい』といったひとときの食に関連するものを、当社としては提供させていただいています。

そういう思い出っておいしさと一緒にあると思うんです。イベントごとや旅行など何か特別な日に食べるシーンを経験したことが、思い出の大きな一部になっている気がするので。だから会社の合言葉として『もっとおいしく』にこだわりながらも、その前提として『もっとたのしく』を大事にしてきました」

トーキョーサイダーが誕生したのは、1947年に現在の社名である「丸源飲料工業株式会社」として戦後に再出発をしたとき。下町の遊園地や野球場や興行施設などで販売され、ハレの日の思い出と一緒にある飲み物として人々に愛されました。

その後、時代と共にチョコレートドリンクやスムージーなど、世間の一歩も二歩も先を行く商品を海外からいち早く取り入れては生み出してきた丸源飲料は、日本の外食産業を支えるメーカーの一つとなっていきます。

そんな中で、2011年に東京スカイツリーが完成したことをきっかけに、ずっと製造中止となっていたトーキョーサイダーを復活させたのも、阿部社長でした。

墨田区内限定で復刻販売したトーキョーサイダー。墨田区を盛り上げるブランドとして「すみだモダン」にも認証されています

「我々は決して黒子に徹したいと思っているわけではなく、結果として、ハレの日を支える商品を目指してきたから今の形になっただけ。これからも外食産業や小売店に欠かせないような商品や原材料を作り続けながらも、地域の方々との取り組みを増やしていきたいと思っています」

100周年を記念して作られたパンフレットには、丸源飲料のあゆみを感じる懐かしい写真たちも掲載されていました

今後は、モナの店舗を使って近隣の飲食店とイベントをしたり、お店を出したい人に期間限定の間借り店舗として活用してもらったりと、ご近所だからできることにも挑戦していきたいそうです。

墨田の地から羽ばたいた老舗企業の誇りと地元への敬意

モナの店先にはこんな夏らしいディスプレイも

地方に製造工場を持ち、今や海外の産地から原料を直輸入しながら、全国に商品を届ける大規模な企業である丸源飲料。

それでも、地域のラムネ屋さんとして生まれたルーツを忘れず、下町らしい地域とのつながりを大事にする姿に、墨田で暮らし、商売を営んできた老舗企業の誇りを感じました。

新しい拠点となったモナで、これからどんな広がりができていくのか楽しみです。と、その前に、販売店ではなかなか手に入らないプロ仕様の商品をまた買いに来なくっちゃ。

素敵なHello!が、今日もあなたに訪れますように。

(取材・執筆:山越栞)

丸源飲料工業株式会社 Food & Beverage mona
住所住所:墨田区立花4-1-5 アネックス1F  Google mapで見る
営業時間10:00〜16:00
定休日土曜日・日曜日・祝日・年末年始(12/29~1/3)
TEL03-3617-0127
WEBhttps://www.marugen.com/
SNS InstagramTwitterFacebook

※本記事に掲載している情報は、2022年7月時点のものです。

0